baby i see you


 確実にわたしに加藤ミリヤを与えたのはミスだった。彼にはバックサウンド的に耳触りがいいし聞きやすいと感想を話したけど、わりと真面目に聞き込んでいて、感情ベースで共感してるからつらい。今、だいぶ彼のことがちゃんと好きだし、幸せなんだけど、そもそもわたし見捨てられ不安と予期不安との戦いが人生の課題みたいなところあるから、こんなに幸せでこんなに好きになって彼が消えたら困るよって予防線を張らないではいられないみたいなモードにになってしまうことがある。


 そういうところに、あなたを諦めないとか、わたしを必要としてよとか、綺麗な耳触りのいい声で歌い上げる曲を聴いたら、ハマってしまうし、投影してしまう。


 付き合ってまだ日数は経ってないくせに、たくさんの時間を過ごしたことによって、いろんな感情になっている。大半は幸せでたまらない素敵な感情なんだけど、ちょびっとずつ汚い感情も混じっている。1つは、罪悪感に似たような、何かだと思う。本当にわたしでいいのか、捨てられちゃうんじゃないかって感情を根本的には拭えないようなわたしで本当にいいのか?みたいな疑問が溜まっていく。そんな簡単に嫌いになったりするような人じゃないことくらいわかってるはずなのに、それでも、回数は多くないにしても、今のは重たくなかったか、今のははしたなくなかったか、今のは素っ気なさすぎたかなって行動の2秒後には自己反省を繰り返してしまうわたしは、やっぱりめんどくさい人間だし、嫌にならないか。こんなことを考えてしまってごめんなさい、と思えて、やんわりと落ち込んでくる。


 表情を見ていると安心ができる。どんなに言葉を尽くしても、ラインをしても、わたしは文字になってしまうと悪い癖の深読みが発動してしまったり、冗談こそ本気で正面から受け入れてしまって、悲しくなったりする。表情はどうしたって隠し切れない部分だと思うから、だからできるだけ会いたいし、できるだけ間近で、2人きりで、まじまじと眺めていたい。重々にわかっている、そうはいっても日々において恋愛ごとは二の次であるべきで、お互いが1人でがんばって生きて、がんばって生きたご褒美としてお互いに会えば幸せだということは、本当にわかっているしわたしの理想だ。特に今回の人は不安にさせてくるような人ではないからこそ、そんな理想が叶う気がしている。4月からわたしが働くのだから普通にメリハリが大事だし、仕事をがんばりたいし、彼も大事な時だし、邪魔な存在にはなりたくないし、うざくなかったら支えたいし、甘やかしてやりたい。好きな人のそばに居続けることはとっても難しい。


 自分の過去が嫌だ。でもその過去がなければ今はないような気もする。あんなに狂い果てて、衝動的で醜く、破壊的な姿を自分では受け入れられない。けど、それがあったからこそ、あったのに、今近くにいる人たちは見捨てないでいてくれて、それが一種の安心感を与えてくれているから皮肉だ。大好きな人たちに対して、大泣きしたり、ドタキャンしたり、何もかもから手を引いたり、吐いたり、最悪なことをたくさんした。それほどわたしが狂うほどに、というとまた言葉が違うのだけど、わたしでさえ過去のなかには執着を超えた大切ななにかがあった。過去がなきゃ今がなくて、あのときのわたしはその都度その都度、確実に過去の彼らのことが大好きだったし、大切だった。同時に、当たり前にというよりもそれ以上に、彼の過去も、なければわたしと今、一緒にいないと思うし、過去の思い出のそれぞれが言葉に尽くせないほど素敵な思い出だと思うし、説明できないほどかなしい思いもしたと思う。お互いにお互いの過去が大切であることは変わらないのに、自分の過去と、相手の過去の質を比べては申し訳なくなる。ちゃんと相手を選ばないでちゃんと愛された経験がなくて、とか、過去のことをこんな風に思ってしまって、本当に情けない。彼が元彼女に薦められたDVDをちらと話した時に、今まで湧いてこなかった嫉妬をしてしまった。今まで、過去は過去と受け止めるべきだし、この人なら過去はちゃんと過去として大切にしてわたしと付き合ってくれているのだろうと信じられて、だから嫉妬なんてしなかった。自分の中にひとかけらの嫉妬心が芽生えてもすぐさま気づかないうちに消し去ることができた。なのに、眠たくて油断したのもあってか、昨日は気づいてしまった。だいぶ、元彼女が羨ましかった。彼と長く一緒に過ごした元彼女が羨ましかった。同時に、それほど好きでも別れてしまうことに気づいて、わたしが元彼女になるのって辛いよって思ってしまった。そうして次に、こんな感情を抱いてごめんねって、わたしが間違えなのはわかってるしわたしも受け止めてるんだけど、感情は持ってしまうんだよって、でもどうしても眠たいときは、生理前は、とかもっともらしい理由をつけながら、たまには思ってしまうことを、許してほしい。もちろん、要求ばかりになるのはもううんざりだから、文字打ちで発散するのだけど。ほんとうにごめんなさい。